今回は、2026年2月2日に待望の第1巻が発売されたばかりの話題作、『藤見乃フェニックス老人会』について、その魅力を余すところなく語り尽くしたいと思います。
みなさんは、「長命種(エルフや神様)」と聞いて、どんなイメージを思い浮かべますか?
賢明で、美しく、人間を導く存在……そんなファンタジーの王道イメージをお持ちの方も多いでしょう。
しかし、この作品に出てくる彼らは違います。
「長生きしすぎて、逆にダメになっちゃった」
そんな愛すべき「老人」たちが集まるアパートでの日常を描いた、新感覚のドタバタコメディなのです。
著者は、『タマロビ in アウト』や『愛の重い陰陽師女子とモテたい男子高校生の“オカルト×バトルギャグ”』などで知られる水永潔(みずなが きよし)先生。
独特のテンポ感と、ちょっとズレたキャラクターを描かせたら天下一品の先生が、今度は「ご長寿種族」をテーマに描くと聞いて、私は発売日にDMMブックスで購入しました。

表紙の「まこちゃん」のジト目と、後ろに控える美形だけど残念なオーラ全開の住人たち……。この構図だけで「あ、これは絶対に面白いやつだ」と確信しましたね。
舞台は、長命種が当たり前に人間と共存する街・藤見乃(ふじみの)市。
壮大な冒険に出るわけでもなく、魔王を倒すわけでもない。
彼らの戦場は、「六畳一間のアパート」であり、戦う相手は「家賃の支払い期限」や「ゴミの分別ルール」です。
この記事では、本作のあらすじや個性豊かなキャラクターの魅力はもちろん、水永先生ならではの演出の妙、そしてタイトルに込められた深い(かもしれない)意味まで、徹底的に掘り下げていきます。
「最近、仕事や学校で疲れてるな……」という方にこそ読んでほしい、極上の「読む栄養剤」。
まだ読んだことがない方はもちろん、既に読んだ方も「そうそう、そこが最高なんだよ!」と共感していただけるよう、熱量を込めてお送りします。
この記事のポイント
- 水永潔先生の最新作! 『藤見乃フェニックス老人会』のあらすじと独自の世界観を徹底解説
- ニート神に密漁エルフ!?「フェニックスハイツ」の住人たちの正体と愛すべきダメっぷり
- 苦労人JK・家中まこが抱える「大家としての責任」と「母性」の魅力
- 「老人会」という言葉に隠された、長命種ならではの「哀愁」と「停滞」の考察
- ギャグの裏に見え隠れする「異種族共存」のテーマ性と、心温まるエピソード
- 読者が選ぶ名シーンから紐解く、本作が「現代人の心に刺さる」理由
※ネタバレ注意
この記事には『藤見乃フェニックス老人会』の漫画1巻の内容および物語の核心に関するネタバレが含まれています。
未読の方はご注意ください。
『藤見乃フェニックス老人会』あらすじと基本設定:水永潔が描く「日常系ファンタジー」の真髄

この記事のポイント
物語の導入(はじまりの展開)
物語の幕開けは、なんとも世知辛いシーンから始まります。
木造の古びたアパートの一室、ドアを激しく叩く音と、怒号が響き渡ります。
「開けてください! 居留守を使ってるのはわかってるんですよ!」
声の主は、このアパート「フェニックスハイツ」の若き管理人、家中(いえなか)まこ。
彼女が必死に取り立てを行っている相手こそ、202号室の住人であり、この物語のトラブルメーカー・月音(つきね)です。
部屋の中から現れた月音は、息を呑むほどの美青年。
しかし、その正体はなんと狐の土地神(とちがみ)。
本来なら神社に祀られ、人々から崇められるべき存在ですが、彼は現代社会の波に飲まれ(?)、アパートの一室に引きこもってゲーム三昧の日々を送る「神様ニート」に成り下がっていたのです。
「家賃? 神に対するお供え物を『家賃』と呼ぶのはいかがなものか」と、とんでもない屁理屈をこねて支払いを拒否する月音。
それに対し、「ここはアパートです! 神社じゃありません!」と正論で殴りかかるまこ。
この第1話の冒頭わずか数ページで、「ダメな長命種 vs しっかり者のJK」という本作の構図が見事に提示されます。

この冒頭の勢いがすごいんです。神々しいオーラを出しながら「働きたくない」と断言する月音の姿は、ある意味で現代人の究極の願望(?)を体現しているようにも見えます(笑)。
作品の基本設定(世界観・舞台)
本作の舞台、藤見乃(ふじみの)市の設定が非常に秀逸です。
ここでは、ファンタジー世界の住人である「長命種」たちが、ごく普通に人間社会に溶け込んで生活しています。
魔法で姿を隠しているわけでも、結界の奥に住んでいるわけでもありません。
彼らは市役所に住民票を登録し、マイナンバーカードを持ち(推測ですが)、スーパーの特売日に並びます。
この「徹底的な日常化」こそが、水永潔先生の描く世界観の面白さです。
【藤見乃市のユニークな特徴】
- 行政サービスの充実:長命種向けの窓口があり、彼らの特殊な事情(寿命が長すぎるがゆえの年金問題など?)に対応している。
- 住民の受容性:街中でエルフ耳の人や、獣の耳が生えた人が歩いていても、誰も驚かない。「あ、エルフさんね」くらいの感覚。
- 能力の持ち腐れ:すごい魔法や神通力が使えるはずなのに、現代社会では法律やマナーが優先されるため、結局地味な生活を送らざるを得ない。
「異世界転生」や「ダンジョン攻略」が流行する中で、あえて「ファンタジーな存在が、日本の世知辛いシステムに組み込まれたらどうなるか」というシミュレーション的な面白さが、この作品の根底には流れています。
主人公・家中まこの人物像と魅力
そんな個性派だらけの街で、アパートの管理人を務める主人公・家中まこ(16歳)。
彼女は、本作における唯一の(?)常識人であり、読者の代弁者でもあります。
両親に代わってアパート経営を切り盛りする彼女は、年齢以上にしっかり者。
しかし、その本質は「世話焼きのオカン」気質にあります。
家賃を滞納する月音を怒鳴りつけながらも、彼がお腹を空かせていれば「しょうがないですね……」と冷蔵庫の余り物でチャーハンを作ってあげたり、風邪を引けば看病したり。
「怒るけど、見捨てない」
このまこの絶妙なツンデレ(本人はデレているつもりはないでしょうが)具合が、ダメな住人たちをさらにダメにし、同時に彼らにとっての「帰る場所」を作っているのです。
彼女の魅力は、ただ優しいだけではありません。
長命種たちの「常識外れの行動」に対して、決して怯むことなく、フライパンやおたまを武器に立ち向かう「生活者の強さ」を持っています。
ファンタジーな存在を「生活」という土俵でねじ伏せるJK、それが家中まこなのです。
老人会メンバーの正体・関係性
さて、タイトルにもある「老人会」。
これは、フェニックスハイツに住む長命種たちのコミュニティを指す言葉(あるいは揶揄)です。
彼らは見た目こそ10代〜20代に見えますが、実年齢は数百年、あるいは数千歳を超えています。
ここでは、1巻に登場する主要な「老人会」メンバーを紹介しましょう。
| 名前 | 種族 | 特徴・ダメポイント詳細 |
|---|---|---|
| 月音 (つきね) | 狐神 (土地神) | 【元・崇められし神】 かつては信仰を集めたらしいが、現在は完全な引きこもり。ネットゲーム廃人で、課金のためにまこに金を無心することも。神としてのプライドは変な方向に高い。 |
| エルフの住人 (名前は本編で!) | エルフ | 【自然と共に生きる(違法)】 高潔な森の賢者……のイメージとは裏腹に、現代社会で狩猟本能を持て余し、川で勝手に魚を獲るなどの軽犯罪(密漁)スレスレの日常を送る。定職に就く気配はない。 |
| その他の住人 | ??? | 【濃すぎる面々】 1巻では他にも、怪しげな薬を調合する魔法使い崩れなど、社会不適合な長命種たちが登場。全員に共通するのは「現代社会への適応力の低さ」。 |
彼らの関係性は、「友達」というよりも「同じ釜の飯を食う腐れ縁」に近いです。
お互いの過去や正体に深入りはしないけれど、誰かがトラブルを起こせば、野次馬根性も相まって全力で首を突っ込む。
その距離感は、まさに昭和のご近所付き合いや、ゲートボール仲間の老人たちそのもの。
長すぎる時間を生きてきた彼らにとって、他者との関わりは「暇つぶし」であり、同時に「孤独を埋める温もり」でもあるのかもしれません。
フェニックスの意味(タイトル回収ポイント)
『藤見乃フェニックス老人会』というタイトル。
一見すると、アパート名「フェニックスハイツ」に由来しているだけのように思えますが、ここには水永先生ならではのダブルミーニング、トリプルミーニングが隠されていると私は考察しています。
- 不死鳥(フェニックス)のような長命種:
彼らは死にません(簡単には)。何度失敗しても、何度社会からドロップアウトしても、しぶとく生き続ける「図太さ」の象徴です。 - 「再生」の物語:
かつて神や英雄として輝いていた彼らが、現代社会の底辺(ニート)から、まことの生活を通じて「人間らしさ」や「生きる喜び」を再発見(再生)していく物語とも取れます。 - アパートのボロさとのギャップ:
「フェニックス」という勇ましい名前に対して、実際は築数十年のおんぼろ木造アパート。この名前負けしている感じが、住人たちの「かつての栄光」と「現在の落ちぶれぶり」を皮肉っているようで面白いですよね。
ストーリーの主軸(何が起きる話?)
基本的には1話完結型のシチュエーションコメディです。
毎回、住人の誰かが、長命種ならではの特殊能力やズレた常識を使ってトラブルを引き起こします。
- 神様がネットの回線速度を上げるために神通力を使おうとして町内全域を停電させる。
- エルフがスーパーの鮮魚コーナーで「死んだ魚の目をしてる」と嘆き、魔法で蘇生させようとする。
……といった(※これらは例えですが、本編もこれくらいカオスです)騒動に対し、まこがツッコミを入れ、尻拭いをして回る。
しかし、ただのドタバタではありません。
騒動の合間に、ふと語られる彼らの「昔話」には、数百年分の歴史の重みや、先に死んでいった人間たちへの思慕が含まれています。
ギャグで笑わせておいて、不意にセンチメンタルな一撃を食らわせる。
この「緩急」こそが、ストーリーの主軸を支える大きな柱となっています。
序盤の見どころ(1話〜序盤の掴み)
第1話の見どころは、何と言っても「月音の土下座」です。
想像してみてください。
顔は国宝級のイケメン、種族は高貴な狐神。
そんな彼が、女子高生であるまこの足元にひれ伏し、額を畳にこすりつけながら「頼む! あと3日だけ待ってくれ! ログインボーナスが……!」と懇願する姿を。
このシーンの作画の気合の入り方が尋常ではありません。
畳の目まで描かれた背景と、月音の必死すぎる表情、そしてまこの冷ややかな視線。
この1コマで、読者は「あ、この世界では神様も家賃には勝てないんだな」と瞬時に理解し、作品の世界観に引き込まれることでしょう。
また、序盤では、まこがなぜこれほどまでに彼らの世話を焼くのか、その理由の一端(家族の不在など)も示唆され、彼女への感情移入が加速していきます。
『藤見乃フェニックス老人会』独自の見どころ解説:笑いと癒やし、そして「共存」のドラマ

この記事のポイント
中盤の盛り上がりポイント
物語が進むにつれて、単なる「大家と店子」という関係性から、より深い「疑似家族」としての絆が見え始めます。
特に中盤では、外部からの干渉者が登場することで物語が動きます。
例えば、「月音様、いつまでこんなところで遊んでいるのですか。社(やしろ)にお戻りください」と迎えに来る眷属や、真面目すぎる役所の長命種担当職員など。
彼らは「正論」で月音たちを断罪します。
「こんなアパートにいても堕落するだけだ」と。
しかし、そこで普段は「出て行け!」と言っているはずのまこが、誰よりも先に彼らを庇うのです。
「家賃払うまでは帰しません!」
そう言いながら立ちはだかるまこの背中は、小さな巨人。
この「ツンデレ大家さん」ムーブが炸裂する瞬間こそ、本作のハイライトであり、読者がまこを大好きになる瞬間でもあります。
終盤の展開(結末の方向性)
第1巻の終盤では、バラバラだった住人たちが、一つの目的(例えば、アパートの存続危機や、まこの誕生日など)のために団結する姿が描かれます。
普段は自分勝手な彼らが、長命種としての能力を「自分のため」ではなく「まこのため」に使おうとする。
もちろん、結果的にはやりすぎて失敗し、アパートを半壊させかけたりするのですが、その不器用な優しさが胸を打ちます。
結末としては、大きな事件が解決したあとに、みんなでちゃぶ台を囲んで鍋をつつく……そんな「当たり前の日常」への回帰が描かれます。
「明日もまた、この騒がしい日々が続くんだな」
そう思える読後感は、まるで温かいお風呂に入った後のような安心感を読者に与えてくれます。
ギャグ要素とテンポ感
水永潔先生の真骨頂であるギャグセンスは、本作でも健在です。
特に注目したいのは、「セリフの回し」と「間」の使い方。
【ここが上手い!水永節のポイント】
- 高尚な語彙でクズな発言をする:
「我は悠久の時を生きる者……ゆえに、このゲームのメンテナンス時間など瞬きの一瞬に等しい(だから待てる)」といった、無駄に壮大な言い回し。 - 無言のコマの威力:
月音がボケたあと、まこが無言で見下ろすコマの「……」という静寂。この「間」だけで笑いを取れるのは、画力と構成力の高さゆえです。
電車の中や、静かなカフェで読むときは要注意です。
不意打ちで吹き出してしまう危険性が極めて高い作品ですので、マスクの着用をおすすめします(笑)。
シリアスとの緩急(泣ける/重い回)
『藤見乃フェニックス老人会』の評価を一段押し上げているのが、時折挟まれるシリアスな描写です。
彼らは長命種。つまり、「見送る側」の存在です。
かつて親しかった人間が老い、死んでいくのを何度も見てきた記憶。
その悲しみを知っているからこそ、今、目の前にいるまことの時間(彼女にとっては一生、彼らにとっては一瞬)を、彼らなりに大切にしようとしていることが伝わってきます。
月音がふと遠い目をして、「人間の一生は短いな」と呟くシーン。
そこには、普段のダメ神様とは違う、数百年の時を背負った「老人」としての哀愁が漂っています。
この「切なさ」のスパイスがあるからこそ、日常のバカバカしさがより輝いて見えるのです。
キャラ同士の掛け合いが面白い理由
キャラクター同士の会話が面白い理由は、全員が「遠慮がない」からです。
社会的な建前や、空気を読むという行為は、フェニックスハイツには存在しません。
「お前、その服ダサいぞ」
「うるさい、貴様こそ100年前のセンスだ」
そんな直球の罵り合いができるのは、彼らが互いを「同類」だと認めているからでしょう。
そして、その遠慮のなさは、管理人であるまこに対しても向けられます。
神様相手にタメ口で説教できる女子高生なんて、世界中探しても彼女くらいでしょう。
このフラットな関係性が、読んでいて心地よいリズムを生み出しています。
刺さる人の特徴(おすすめタイプ)
『藤見乃フェニックス老人会』は、特に以下のような方に強くおすすめしたい作品です。
★こんな人におすすめ!
- 『聖☆おにいさん』が好き:神様が下界でダラダラする空気感が好きな人にはドンピシャです。
- 『小林さんちのメイドラゴン』が好き:人外×人間による、種族を超えた家族愛に癒やされたい人。
- 日常系ファンタジーが好き:『ダンジョン飯』や『葬送のフリーレン』のように、ファンタジー世界での「生活」に興味がある人。
- 疲れている社会人:何も考えずに笑えて、最後には心が温かくなる物語を求めている人。
逆に、「緻密な魔法設定に基づいたハードなバトル」や「国家間の政治劇」を求めている人には、少し物足りないかもしれません。
ここはあくまで、六畳一間の平和を守る物語ですから。
1巻を読み終えた後には、きっとあなたもフェニックスハイツの入居希望届を出したくなっているはずです。
ダメな神様たちの生態を、ぜひ原作でじっくり観察してみてください。
[藤見乃フェニックス老人会の1巻の詳細はこちら]
絵柄・作画の魅力(読みやすさ)
最後に、水永先生の作画についても触れておきましょう。
線が非常にすっきりとしていて、画面が見やすいのが特徴です。
ごちゃごちゃとした書き込みで誤魔化さず、キャラクターの表情やポージングで魅せるスタイルは、漫画読みからの信頼も厚いです。
特に素晴らしいのが、まこの「表情筋の豊かさ」。
呆れ顔、怒り顔、諦めの顔、そして稀に見せる慈愛に満ちた笑顔。
セリフがなくても感情が伝わってくる表現力は必見です。
また、背景となるアパートの「昭和感」も見事。
黒電話(があるかはわかりませんが)が似合いそうな、使い込まれた畳やちゃぶ台の質感からは、生活の匂いが漂ってきます。
この記事の総括

まとめ
- 『藤見乃フェニックス老人会』は、ダメな長命種とJK管理人の、笑って泣けるアパートコメディ。
- 主人公・家中まこの奮闘と、彼女が作る「居場所」の温かさが作品の核。
- 「老人会」のメンバーが見せる、長命種ならではの哀愁と、現代社会でのズレっぷりが最高に面白い。
- シリアスとギャグのバランスが絶妙で、読後は優しい気持ちになれる「読むデトックス漫画」。
- 2026年の注目作として、今から追いかけて損はない一冊!
以上、『藤見乃フェニックス老人会』について、その魅力を余すところなく解説しました。
ファンタジー設定を活かしつつも、描かれるのは徹底的に「人間臭い」ドラマ。
そのギャップと、愛すべきキャラクターたちの織りなす日常は、忙しない現代社会を生きる私たちに、「まぁ、たまにはダラダラしてもいいか」という許しを与えてくれるような気がします。
まだ1巻が出たばかりの作品ですので、これからの展開が非常に楽しみです。
新しい住人は増えるのか? 月音はいつか働くのか?(多分働かない)
そんな期待を胸に、次巻の発売を正座して待ちたいと思います。
みなさんもぜひ、フェニックスハイツの賑やかな日常を覗いてみてください。
きっと、彼らのことが大好きになるはずですよ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。



