進撃の巨人を読み進めていく中で、最も世界観がひっくり返った瞬間。
それは間違いなく、壁の中に「彼ら」がいると判明した時ではないでしょうか。
私自身、アニメの第一期最終回のエンドロール後、壁の一部が崩れ落ちてあの「顔」が見えた時、テレビの前で言葉を失ったのを昨日のことのように覚えています。
それまでは「人類を守る最後の砦」だと思っていた壁が、実は「人類を食らう天敵」の集合体だったなんて、あまりにも救いがない設定だと絶望しました。
今回は、物語の根幹であり最大の謎の一つである「壁の巨人の正体」について、徹底的に深掘りしていきます。
なぜ壁の中に巨人が埋まっているのか？彼らは生きているのか？そして、あの恐ろしい「地鳴らし」の正体とは何だったのか。
不確定な要素については、私なりの考察（妄想とも言います）を交えながら、この作品が描く残酷で美しい真実に迫りたいと思います。
これから解説する内容は、物語の結末に関わる重大なネタバレを含みます。
まだ完結まで読んでいない方は、原作を読んだ後に読み進めることを強くおすすめします。
それでは、壁の中に隠された100年の沈黙を破りに行きましょう。
この記事のポイント
- 壁の正体は、100年前に初代王が用意した「幾千万の超大型巨人」の成れの果て
- 人類を守る「三重の壁」は、実は世界に対する最強の「抑止力（地鳴らし）」だった
- 壁の高さ50mに対し、中の巨人は60m級であり、足元は地下深くまで埋まっている
- 壁の巨人は日光を遮断されることで活動を停止し、壁そのものとして硬質化している
- 最終的にエレンによって解放され、パラディ島以外の文明を破壊する兵器と化した
- 壁の存在は、エルディア人の罪と、王家の「平和への逃避」を象徴する悲劇の産物である
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壁の巨人の正体と「三重の壁」の構造的謎｜人類を守る檻の真実
ここでのポイント
物語の冒頭から当たり前のように存在していた「壁」。
人類の最後の生存圏を守る盾として描かれていましたが、そこには最初から違和感が散りばめられていました。
まず、これほどの巨大建造物を、巨人の脅威に晒されながらどうやって人間が作ったのか？
重機もない時代に、隙間なく50mの壁を円形に築くなんて、物理的に不可能です。
この「物理的な不可能」こそが、壁の正体が人間由来の建造物ではないことを示唆していたんですね。
人類の活動領域を守る「三重の壁」：マリア・ローゼ・シーナの役割
パラディ島の人類が住む領域は、同心円状の三つの壁によって区切られています。
一番外側が「ウォール・マリア」、真ん中が「ウォール・ローゼ」、そして一番内側が「ウォール・シーナ」です。
この構造は、外敵からの侵入を段階的に防ぐための「多重防御」の役割を果たしていました。
しかし、見方を変えれば、これは「人間を逃さないための三重の檻」でもあったわけです。
外への探究心を削ぎ、内側へ内側へと安寧を求めさせる構造。
私は、この壁の配置図を見た時、家畜小屋の柵のように見えてなりませんでした。
壁の名前の由来と、そこに隠された王政・王家の秘密
壁の名前には、ある悲しい由来があります。
これらはすべて、初代フリッツ王の妻であり、始祖ユミルの背骨を食らった3人の娘たち（マリア、ローゼ、シーナ）の名前から取られています。
母の亡骸を食らい、その力を継承した娘たち。
彼女たちの名前を壁に冠することで、王家は「民を守る母なる存在」として壁を神聖化させようとしたのでしょうか。
それとも、始祖ユミルの隷属の歴史を忘れないための、歪んだ記念碑だったのでしょうか。
壁の名前そのものが、巨人の力の継承と、血塗られたエルディアの歴史を物語っています。
壁の高さとサイズ感が示す、常軌を逸したスケール
壁の高さは約50メートルとされています。
これは、通常の巨人（最大でも15メートル級）が決して越えられない絶妙な高さです。
しかし、ここで一つの疑問が生じます。
壁の中にいる「超大型巨人」は、ベルトルトが変身した際、60メートルありました。
壁が50メートルで中の巨人が60メートルなら、頭が飛び出してしまうはずですよね？
この矛盾については、「地中深く埋まっている」という説が有力です。
事実、スピンオフ小説やアニメのアイキャッチで語られた「炭鉱夫の話」では、地下深くまで壁と同じ材質が続いていることが示唆されています。
つまり、壁の巨人は少し膝を曲げているか、あるいは地面を掘り下げて埋められている可能性が高いのです。
見えている50メートルは氷山の一角に過ぎないのかもしれません。
壁の地図と配置から読み解く戦略的意図
TVアニメ「進撃の巨人」Season3の9話（第46話）「壁の王」をご視聴いただいた皆様、ありがとうございました！
— 「進撃の巨人」公式アカウント (@anime_shingeki) September 16, 2018
関西地方ではこのあと25時15分からの放送です！来週の放送もお楽しみに！
イラスト: 伊藤 香奈#shingeki pic.twitter.com/R8PGozqTTn
壁には、巨人をおびき寄せるための「突出区（シガンシナ区、トロスト区など）」が4箇所ずつ設けられています。
巨人は人の多い場所に集まる習性があるため、あえて人を密集させた突出区を作ることで、壁全体の防衛コストを下げているのです。
これは非常に合理的な戦略ですが、倫理的に見れば最悪です。
突出区の住民は、いわば「巨人の餌」としての囮（おとり）にされているわけですから。
エレンたちが住んでいたシガンシナ区が真っ先に襲われたのも、この構造上の必然でした。
壁の秘密を知る教団「ウォール教」と宗教による隠蔽工作
壁を「神」として崇めるウォール教。
彼らはただの狂信的な集団かと思いきや、実は「壁の真実」を知る数少ない組織でした。
ニック司祭がハンジに対して頑なに口を閉ざしたのは、信仰心だけが理由ではありません。
彼らは、「壁の中の巨人に日光を当ててはいけない」という、人類存亡に関わる重大なタブーを知っていたのです。
宗教というオブラートで包むことで、民衆に疑問を持たせず、かつ物理的な接触（壁の改築や破壊）を防ぐ。
情報統制の手段として、宗教がいかに強力かを見せつけられました。
壁の内部の巨人“覚醒”の危険性と日光の関係
壁の中の巨人は死んでいるわけではありません。
日光を遮断されているため、活動エネルギーを得られずに休眠状態にあるだけです。
もし壁が大きく破壊され、彼らの全身に直射日光が当たればどうなるか。
「始祖の巨人」の制御がない状態であれば、彼らは本能のままに動き出し、目の前の人間を食らい尽くすでしょう。
壁は「巨人を防ぐ壁」であると同時に、「中の巨人を眠らせておくための遮光カーテン」でもあったのです。
薄皮一枚隔てた向こう側に、数千万の化け物が眠っている。この緊張感は計り知れません。
壁の中の巨人を目撃した時の衝撃と伏線
女型の巨人との戦闘の余波で、ストヘス区の壁の一部が剥がれ落ちました。
そこから覗いた巨大な眼球。
アニメ版では、その目がギョロリと動いた演出があり、背筋が凍りました。
あの瞬間、物語のジャンルが「人類vs巨人」の戦いから、「世界の謎を解くミステリー」へと一気に深化したように感じます。
ハンジさんがニック司祭を壁の上から突き落とそうとした時の鬼気迫る表情も、事の重大さを物語っていました。
壁の構造自体が持つ特殊性と強度の秘密
壁の素材は、ただの石やレンガではありません。
アニやライナー、そしてエレンも使用した「巨人の硬質化能力」と同じ物質です。
つまり、壁全体が有機的な物質の結晶なのです。
だからこそ、大砲を撃ち込んでも傷一つ付かず、100年の風雪にも耐えられたのでしょう。
超大型巨人が肩を組み、円陣を組んで硬質化する。
その光景を想像すると、建築というよりは儀式に近い不気味さを感じます。
物語における伏線としての壁：歴史の謎を解く鍵
第1話から存在する壁が、まさか最終決戦の「兵器」になるとは、連載当初は誰も予想できなかったでしょう。
しかし、タイトルである「進撃の巨人」や、第1話の「二千年後の君へ」というメッセージ。
これらすべてが、壁の中に封じ込められた歴史とリンクしていました。
壁は、パラディ島の人々にとっては世界のすべてでしたが、外の世界から見れば「悪魔の島」の象徴だったのです。
壁と社会構造：階級社会の象徴としての側面
壁の構造は、そのまま社会のヒエラルキーを表しています。
最も安全なウォール・シーナの内側には王族や貴族、憲兵団が住み、最も危険なウォール・マリアには貧困層や開拓民が追いやられる。
物理的な壁が、人間同士の心の壁をも強固にしていました。
「壁内人類」という言葉で一括りにされていても、そこには明確な格差と差別が存在していたのです。
これもまた、諌山先生が描きたかった人間のリアルな姿なのかもしれません。
壁の起源と王家の秘密！巨人が埋め込まれた真実とは
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— 「進撃の巨人」公式アカウント (@anime_shingeki) October 2, 2024
我が壁の真の王よ！
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第47話「友人」
劇場版「進撃の巨人」完結編THE LAST ATTACK
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ここでのポイント
壁の中に巨人がいることは分かりましたが、では一体「誰が」「何のために」こんな恐ろしいものを作ったのでしょうか。
その答えを知るには、100年前の歴史に遡る必要があります。
そこには、一人の王の苦悩と、平和へのあまりにも極端な渇望がありました。
真実を知れば知るほど、この物語には「絶対的な悪」も「絶対的な正義」も存在しないのだと思い知らされます。
壁の巨人の正体：無垢の巨人との違いとは？
壁を構成している巨人は、通常の「無垢の巨人」とはサイズも性質も異なります。
彼らは「超大型巨人」と同等の体格を持っていますが、知性を持っているわけではありません。
あくまで「始祖の巨人」の命令に従うためだけの存在として生み出されました。
しかし、忘れてはならないのは、彼らも元々は人間（ユミルの民）だったという事実です。
何十万、何百万という同胞を巨人化させ、柱として固定する。
その犠牲の上に成り立っていたのがパラディ島の平和だったのです。
彼らに意識があるのかは不明ですが、もし夢を見ているとしたら、それは悪夢以外の何物でもないでしょう。
巨人の硬質化能力と結晶化（クリスタリゼーション）能力の応用
壁の強度は、巨人の特殊能力である「硬質化」によって保たれています。
アニが自身を封印した水晶体のような「結晶化（クリスタリゼーション）」に近い高密度の硬質化です。
隣り合う巨人が腕を組み、皮膚を硬質化させて一体化することで、継ぎ目のない強固な壁面を形成しました。
地下の鉱脈とも一体化していると言われており、これはもはや建築物というより、島そのものを覆う巨大な殻のようなものです。
壁の制作方法／起源：始祖の巨人の力が成せる技
100年前、第145代フリッツ王（パラディ島初代王カール・フリッツ）は、始祖の巨人の力を行使しました。
彼はエルディア人の中から大量の人間を選び出し（あるいは志願させたのか、強制だったのかは不明ですが）、超大型巨人へと変えました。
そして彼らを三重の円形に整列させ、一斉に硬質化能力を発動させたのです。
想像してみてください。
地平線を埋め尽くすほどの巨人が行進し、王の命令一つで石化していく様を。
それは神話のような光景だったに違いありません。
初代王（カール・フリッツ）の決断と「不戦の契り」
なぜカール・フリッツはこんなことをしたのでしょうか。
彼は、巨人の力を使って他国を蹂躙し続けるエルディア帝国の歴史に疲れ果てていました。
「巨人の力など、この世から消えてしまえばいい」
そう願った彼は、国民の一部を引き連れてパラディ島へ逃亡し、壁の中に引きこもったのです。
そして、子孫が始祖の力を使って再び戦争を始めないよう、「不戦の契り」という制約を課しました。
これは、王家の人間が始祖を継承しても、初代王の平和思想（自滅思想）に洗脳され、本来の力を発揮できなくなるという呪いです。
壁の中に眠る巨人の数（数百万〜数千万体）の真偽
作中でフリッツ王は「幾千万の巨人が平地にならす」と世界を脅しました。
しかし、理系的な視点で壁の総延長（マリアの外周など）から計算したファンの考察や、作中のハンジたちの推測では、実際には「約50万体〜60万体」程度ではないかと言われています。
「数千万」というのは、王によるハッタリ（抑止力を高めるための誇張）だった可能性が高いです。
とはいえ、50万体であっても、世界を滅ぼすには十分すぎる数です。
数がどうであれ、その破壊力が絶望的であることに変わりはありません。
壁＝防御ではなく “抑止力” としての最終兵器
壁の本来の目的は、外敵を防ぐことではありませんでした。
「もし俺たちに手を出したら、壁の中の巨人を解き放って世界を踏み潰すぞ」という脅し。
つまり、現代社会でいうところの「核兵器」のような「相互確証破壊」のための抑止力だったのです。
カール・フリッツ自身は本気で地鳴らしをする気はありませんでしたが（むしろエルディア人が裁かれる日を待っていた）、外の世界に対しては最強のブラフとして機能していました。
王政・王家の秘密と記憶の改竄
壁の中の平和を維持するために、王は始祖の力を使って国民の記憶を改竄しました。
「人類は巨人に食い尽くされ、壁の中だけが唯一の生き残りである」という偽の歴史を植え付けたのです。
外の世界への興味を失わせ、壁の中だけで完結する社会を作る。
これは洗脳ですが、王なりの「残酷な世界から民を守るための優しさ」だったのかもしれません。
しかし、アッカーマン一族や東洋人のように記憶改竄が効かない血統も存在し、彼らは口封じのために迫害されました。
壁の秘密と隠蔽（宗教・制度）の徹底ぶり
壁の秘密を守るための隠蔽工作は徹底していました。
中央憲兵による暗殺部隊が暗躍し、壁に近づこうとする者、外の世界に興味を持つ者、技術を発展させようとする者を次々と消していきました。
アルミンの両親が気球を作ろうとして殺されたのも、空から壁の外を見られることを恐れたからです。
壁の中は、物理的に閉じ込められているだけでなく、知識や技術、そして真実からも遮断された牢獄だったのです。
壁の真の意味と人類の欺瞞：かりそめの平和
エレンが言った「家畜の安寧」。
壁の中の100年の平和は、まさに飼い主（王）によって管理された平和でした。
自分たちが何者かも知らされず、いつか来る虐殺の日まで、ただ生かされているだけ。
その欺瞞に気づいてしまった時、エレンの怒りが爆発したのは当然と言えます。
真実を知ることは幸福なのか、それとも知らぬが仏なのか。この作品は常にその問いを投げかけてきます。
防衛用壁 vs 兵器としての壁の転用
壁は、王の意図とは裏腹に、最終的には「防衛設備」から「攻撃兵器」へと転用されました。
エレンが始祖の力を掌握し、パラディ島を守るために「地鳴らし」を発動させた瞬間、壁はその役割を180度変えました。
人々を守っていた石垣が、人々を殺すための行進を始める。
この「守護者が破壊者になる」という逆転こそが、進撃の巨人の物語における最大の皮肉であり、悲劇のクライマックスでした。
「地鳴らし」の発動と壁の崩壊が意味する物語の結末
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— 「進撃の巨人」公式アカウント (@anime_shingeki) December 24, 2024
エレン……
もうすぐみんなが会いに来るよ
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劇場版「進撃の巨人」完結編THE LAST ATTACK
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ここでのポイント
物語の終盤、ついに恐れていた事態が現実となります。
エレンによる「地鳴らし」の発動。
壁が音を立てて崩れ落ち、中から現れた無数の巨人が行進を始めるシーンは、漫画史に残るトラウマ級の絶望感でした。
ここでは、壁の巨人が解放された後に何が起きたのか、そしてそれが物語にどんな結末をもたらしたのかを解説します。
壁からの巨人の解放：エレンの選択
エレンは、ジークの「安楽死計画（エルディア人が子供を産めなくして緩やかに滅ぶ）」を拒絶しました。
彼が選んだのは、自分が生まれ育った島の人々を守るために、「島の外のすべてを駆逐する」という修羅の道でした。
始祖ユミルの協力を得て、すべての硬質化を強制解除。
その瞬間、パラディ島を囲んでいた三重の壁は一斉に崩壊し、中の巨人たちが解き放たれました。
守るべき壁を壊すことでしか、守るべき人々を守れない。
エレンのこの矛盾した決断に、胸が締め付けられます。
“地鳴らし”（Wall Titans の行進）の絶望的な破壊力
「地鳴らし」とは、文字通り大地を鳴らし、踏み均すこと。
数十万体の超大型巨人が横一列に並び、大陸全土を行進します。
人間も、家も、森も、文明も、すべてが巨大な足の裏で押し潰されていく。
逃げ惑う人々が蟻のように踏み潰される描写は、見ていて本当に辛く、目を背けたくなりました。
これは戦争ではなく、一方的な「大災害」です。
壁の巨人の真の姿は、人類をリセットするための破壊神そのものでした。
巨人の蒸気・熱／破壊力による二次被害
超大型巨人の恐ろしさは、踏みつけだけではありません。
彼らは常に高温の蒸気を発しています。
数十万体が密集して移動することで、周囲の気温は急激に上昇。
海を渡れば海水が沸騰し、魚が死滅する。
森を通れば木々が自然発火し、火災旋風が巻き起こる。
巨人に踏まれる前に、熱波で焼き殺された人々も多かったことでしょう。
まさに「歩く焦土作戦」です。
壁の中の巨人の活動条件（日光など）と夜間の進軍
通常、巨人は夜になると活動を停止します。
しかし、始祖の力を完全に掌握したエレンの制御下にある壁の巨人たちは違いました。
日光の有無に関わらず、昼も夜も関係なく進軍を続けたのです。
人類にとって、夜の闇に紛れて逃げることすら許されない。
この「不眠不休の進撃」こそが、世界連合艦隊ですら止められなかった最大の要因の一つです。
休まない敵に対して、人類はどう抗えばいいというのでしょうか。
壁の崩壊と物語の転機：パラディ島の変貌
壁の崩壊は、パラディ島内にも大きな被害をもたらしました。
壁の近くに住んでいた住民たちは、崩れてきた瓦礫の下敷きになり、多くの死傷者が出ました。
エレンは島を守ろうとしましたが、その過程で島民の一部も犠牲にしてしまったのです。
壁がなくなった島は、見晴らしは良くなりましたが、同時に「絶対的な安全圏」を失いました。
剥き出しになった荒野で、人々はこれからどう生きていくのか。
壁の喪失は、パラディ島の社会構造そのものを崩壊させました。
壁の真の意味と人類の欺瞞、そして自由への代償
アルミンはずっと「壁の外の世界」を夢見ていました。
炎の水、氷の大地、砂の雪原。
しかし、壁の向こうにあったのは自由な世界ではなく、自分たちを憎む敵意に満ちた世界でした。
壁は人類を閉じ込める檻でしたが、同時に残酷な真実から目を背けさせてくれるフィルターでもあったのです。
そのフィルターを取り払った代償として支払われたのが、人類の8割虐殺という悲劇でした。
自由とは、これほどまでに血塗られたものなのでしょうか。
物語における伏線／歴史の謎のすべてがここに集約
第1話のタイトル「二千年後の君へ」。
そして「いってらっしゃい エレン」。
すべての伏線は、この地鳴らしと、その果てにあるエレンとミカサの結末に繋がっていました。
壁の中に巨人がいた理由も、フリッツ王の不戦の契りも、すべてはこの瞬間のための舞台装置だったと考えると、諌山先生の構成力には恐怖すら覚えます。
壁の秘密を知る教団／宗教（ウォール教）の終焉
地鳴らしの発動とともに、ウォール教の存在意義も消滅しました。
彼らが神と崇めた壁は歩き出し、世界を滅ぼす悪魔となりました。
教徒たちはその光景を見て何を思ったのでしょうか。
盲信していたものが崩れ去った時、人は無力です。
しかし、彼らが命がけで守ろうとした秘密（壁の中の巨人）が、結果的に世界を終わらせたというのは皮肉な話です。
壁＝防御ではなく “抑止力” が実行された日
抑止力とは「使わないこと」に意味がある力です。
「ボタンを押すぞ」と脅し合っている状態が平和であり、実際に押してしまったらそれは「破滅」です。
進撃の巨人は、抑止力が破綻した世界を描きました。
現実世界でも核兵器という抑止力が存在しますが、もしそれが使われたらどうなるか。
地鳴らしの描写は、私たちに対する強烈な警鐘のようにも思えます。
壁の巨人の最後と巨人のいない世界
物語のラスト、ミカサの決断によって巨人の力は世界から消え去りました。
地鳴らしを行っていた壁の巨人たちも崩れ落ち、消滅（あるいは蒸発）していきました。
彼らが人間に戻ることはありませんでした（一部の考察では人間に戻った説もありますが、描写的には消滅したように見えます）。
数千万の命が、エレンの目的のためだけに生まれ、利用され、消えていった。
壁のない世界で、生き残った人々は再び争うのか、それとも手を取り合うのか。
エレンが残した「巨人のいない世界」が、本当の楽園になるかどうかは、残された人々に託されたのです。
この記事の総括
この記事の総括
- 壁の巨人の正体は、初代王が「始祖の力」で作った幾千万の超大型巨人である
- 壁は人類を守る盾ではなく、世界を威圧するための「地鳴らし」という名の時限爆弾だった
- 壁の内部は硬質化能力で形成され、日光を遮断することで巨人を休眠させていた
- エレンによる解放は、パラディ島を守るための選択だったが、世界にとっては未曾有の大虐殺となった
- 壁が崩壊し、巨人の力が消えた後、人類は「壁のない世界」でどう生きるかを問われている
- 「壁」という存在は、物理的な障壁、心理的な隔絶、そして歴史の隠蔽という多層的な意味を持っていた
今回は「進撃の巨人」における最大の謎、壁の巨人の正体について考察してきました。
あらためて振り返ると、あの壁はただの背景ではなく、物語の主人公の一人だったと言っても過言ではありません。
静かに佇み、人類を見下ろし、最後には世界を蹂躙した壁の巨人たち。
彼らの沈黙の声に耳を傾けながら、もう一度原作を読み返してみてはいかがでしょうか。
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